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『坂の町』嵜山 弓

同人誌として発表されたものを主体としてまとめた本ということだ。だんだんとこういう形の出版が増えてきているなあ。もちろんそれじたいは悪いことではないけれど雑誌という形態が昔ほど効力を失ってきているということなのかもしれない。
それはさておいて、これでデビューしていなかったのかと思うくらいに絵は安定していてもちろん内容も面白い。
全般的に恋愛の物語なんだけれども、その切り取り方が手慣れているというかうまいなあ。表題作は坂の多い町に住む少女の初恋の話で、小学生のころから始まり大学に入学してこの町を出るまでの物語だ。それは一方的な恋で主人公はそれがいつかは叶うものだと思いこんでいて、相手もそんな素振りを見せながらもそれは恋ではなくやさしさでしかなかったという部分といい、そしてそこからの主人公の成長。失恋でありながらカラッと爽やかに終わるのは気持ちいい。
傘をさすのが嫌いという先生に傘をさしてあげるという一言をいうことができなくて、雨に濡れたままにしてしまった、たとえそれが本人が望んだこととしても、そんな学校での一場面を切り取った「相合い傘」もうまいなあと思う。
最後の「#キライ #おばあちゃん」だけがちょっと違っていて、恋愛には関係ない話なんだけれども、こういう話が最後に来ると、次の物語を期待したくなる。




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