2015年の漫画回顧として簡単にその時点で印象に残っているものについて書いたけれども、その後で去年読んだ漫画のリストを見なおしてみたら良い悪いは別としてちょっと言及しておきたいと思うものが予想以上にあった。補遺というには分量が多すぎて、こちらのほうがメインになりかねないのだが、あくまで補遺として書いておく。
もちろん、ここでも触れていない作品はいくつかあるけれども、それに関しては個別で記事にするつもり。
細野不二彦『商人道』全3巻
細野不二彦『いちまつ捕物帳(1)(2)』
『電波の城』を見事に完結させた後も精力的に作品を描き続けている細野不二彦。『商人道』は意外と早く完結してしまって、まあタイトルからして「商人道」を「あきんロード」と読ませるセンスはちょっとないよなあと思っていたけれども、それはそれとして、ちょっと打ち切りに近いような唐突な終わりであってもきっちりと話はまとめる手際はうまい。
一方で捕物帳に挑んだ『いちまつ捕物帳』は主人公が二人のバディ物という設定からして細野不二彦版『佐武と市捕物控』といった趣があるけれども、中身は立派な細野不二彦の世界。その他『ヒメタク』もあって精力的だ。
香川まさひと(作) 若狭星(絵)『すばらしきかな人生-まさみ-(1)』
まさみという名前の女性の人生を描いた短編集。ただし、名前がまさみというだけでそれぞれの話の主人公「まさみ」はまったくの別人。ハンセン病患者だったり、顔の半分に痣のある女性だったり、統合失調症の患者だったりするので、そこで描かれる物語は重苦しい。
鬼頭莫宏『なにかもちがってますか』全5巻
鬼頭莫宏『のりりん』全11巻
奇しくも白鬼頭莫宏と黒鬼頭莫宏の二作が同じタイミングで完結した。『なにかもちがってますか』は『ぼくらの』ほど後味の悪い作品ではないけれども、唐突気味に終わってしまったのは残念。それに比べるとさわやかすぎる『のりりん』は綺麗にまとまったので、たまには鬼頭莫宏のこういう作品も読んでみたいという気持ちにさせられる。
道草晴子『みちくさ日記』
他人事としては読めないのだが、閉鎖病棟の窓の鉄格子とかのエピソードなどはそうだよなあと思う。妻の入院した病院の窓は手が一本出せる程度しか開けることができなかった。
カサハラテツロー『アトム ザ・ビギニング(1)(2)』
ゆうきまさみがコンセプトワークスとして参加しているので読んでみた。どこまで作品に関わっているのかはわからないけれども、今のところはカサハラテツローの世界。無理に手塚治虫の絵に似せようとしていないところも含めてどういうふうにアトムへとつながっていくのか楽しみでもある。
芦奈野ひとし『コトノバドライブ(1)(2)』
たまに読む分にはちょうどいい。物語などあって無きようなもので、何処を切り取っても芦奈野ひとし。空気感、特に冬の朝のキリッとした冷たくそしてすがすがしい空気を感じさせてくれる。
デイビッド・ピーターセン『マウスガード 1152年 (秋)(冬)』
アメコミ版『ガンバの冒険』と例えるのが手っ取り早いが、『ガンバの冒険』とはまったく雰囲気も味付けも異なる。より殺伐として刹那的で秋と冬という季節の物語のせいか、絶望的な部分もある。
大石まさる『ライプニッツ』
大石まさるのSFはやっぱりハインラインだなあと思わせられる。猫も出てくるし。
白井弓子『ラフナス』全2巻
『WOMBS』と同じく骨太の物語になるのかと思ったらあっさりと終わってしまった。作者のあとがきによると同じ世界での別の物語の構想もあるようなので、これはこれでいいかという気もするけれども、世界設定の面白さに比べて物語が少し弱かった印象を受けてしまう。
優『五時間目の戦争(1)(2)』
浅野いにお『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション(1)(2)』
高橋しん氏の『最終兵器彼女』とか、秋山瑞人の『イリヤの空、UFOの夏』のような、社会的規模ではなにかとんでもないことが起こっているという状況下での主人公たちの日常生活を描いた物語というのが実は好きだ。『五時間目の戦争』と『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』もその系統に連なる作品。
三部けい『僕だけがいない街(1)-(7)]』
5巻で真犯人が判明した後、どういう展開になるのかと思っていたら予想外の展開をしたのだが、リバイバルの能力はどうなっているのだろうか。
横山旬『変身!(1)(2)』
2巻に入ってようやく少し大きな話が見えてきたのだけれども、あまりそういった方向へとは進んでほしくないなあというくらいに、基本の物語が面白い。
白山宣之『幻の花』
2013年の『地上の記憶』に続き、白山宣之の作品がまた一冊になった。怪獣漫画なのに怪獣が一切描かれない「宇宙大怪獣ギララ」が秀逸。怪獣映画でありながら怪獣が登場しない『大怪獣東京に現わる』よりも前に描かれた作品。
岩岡ヒサエ『星が原あおまんじゅうの森』全5巻
実を言うと3巻で挫折してしまったのだけれども、5巻で完結したということで最後まで読んでみたところ、挫折しないでよかったと感じさせてくれるくらい綺麗に終わらせてくれた。ただ、ここまでくるともう一歩その先を見せて欲しかった、という欲が出てくるのは『土星マンション』と互換性のある印象だからだろう。
阿部共実『死にたくなるしょうもない日々が死にたくなるくらいしょうもなくて死ぬほど死にたくない日々(1)(2)』
こっちの方向へと向かっていったのかといった感じ。収録作の中では「8304」と「7759」がそのタイトルの特異な付け方も相まって別格。好きか嫌いかでいえば好きではないのだが、阿部共実からギャグと毒を取り除くとこれになるのかと思う。
麻生みこと『海月と私』全4巻
『星が原あおまんじゅうの森』とは反対に、もう少しこの世界を楽しみたいと思ったけれども、意外とあっさりと終わってしまった。
市川ラク『白い街の夜たち』全3巻
結局、作者のトルコ好きということに終始しただけの話になってしまったきらいもあるけれども、それもまた良し。
ゆうきまさみ『白暮のクロニクル(1)-(7)』
基本的に一巻完結のエピソードのつながりで、抜群の安定度。
たかみち『百万畳ラビリンス』全2巻
ある日突然、日常が非日常になる。どこまで行ってもループする世界の中でそこから脱出しようとする主人公たち。しかし主人公はかならずしもこの世界を忌み嫌っているわけではなく、脱出するというよりもこの世界の謎を解くというゲームを楽しむ。主人公の造形が素晴らしい。
松田洋子『私を連れて逃げて、お願い。(1)(2)』
とことん奈落の底へと転がり落ちて破滅へとむかっていく男女の物語。こうして書くとコーネル・ウールリッチの世界にも通じるものがあるのだが、ウールリッチが描く人物と松田洋子の人物の間には天と地の違いがある。徹底したダメ人間で、それ故に可笑しいのだが、その可笑しさは悲しさであり、切なさでもある。
西UKO『となりのロボット』
高浜寛『蝶のみちゆき』
一ノ関圭『鼻紙写楽』
この三冊は5巻以内で完結する傑作漫画99冊+α その一で紹介済みなので省く。
岡村星『誘爆発作(1)-(5)』
勢いだけで乗り切っているといえばそこまでなんだけれども、4巻までは面白い。5巻に入って勢いだけでカバーしきれなくなってきたきらいがあるのが残念だけれども、次巻で持ちなおすことができるか。巻末のあとがき漫画も面白い。
ヤマザキコレ『魔法使いの嫁(1)-(4)』
ケルト神話の世界を持ってきたファンタジー。上品さと落ち着きがあって雰囲気は抜群に良い。その分派手な展開はないけれども、同じ作者の『フラウ・ファウスト(1)(2)』も同様に面白い。
もちろん、ここでも触れていない作品はいくつかあるけれども、それに関しては個別で記事にするつもり。
細野不二彦『商人道』全3巻
細野不二彦『いちまつ捕物帳(1)(2)』
『電波の城』を見事に完結させた後も精力的に作品を描き続けている細野不二彦。『商人道』は意外と早く完結してしまって、まあタイトルからして「商人道」を「あきんロード」と読ませるセンスはちょっとないよなあと思っていたけれども、それはそれとして、ちょっと打ち切りに近いような唐突な終わりであってもきっちりと話はまとめる手際はうまい。
一方で捕物帳に挑んだ『いちまつ捕物帳』は主人公が二人のバディ物という設定からして細野不二彦版『佐武と市捕物控』といった趣があるけれども、中身は立派な細野不二彦の世界。その他『ヒメタク』もあって精力的だ。
香川まさひと(作) 若狭星(絵)『すばらしきかな人生-まさみ-(1)』
まさみという名前の女性の人生を描いた短編集。ただし、名前がまさみというだけでそれぞれの話の主人公「まさみ」はまったくの別人。ハンセン病患者だったり、顔の半分に痣のある女性だったり、統合失調症の患者だったりするので、そこで描かれる物語は重苦しい。
鬼頭莫宏『なにかもちがってますか』全5巻
鬼頭莫宏『のりりん』全11巻
奇しくも白鬼頭莫宏と黒鬼頭莫宏の二作が同じタイミングで完結した。『なにかもちがってますか』は『ぼくらの』ほど後味の悪い作品ではないけれども、唐突気味に終わってしまったのは残念。それに比べるとさわやかすぎる『のりりん』は綺麗にまとまったので、たまには鬼頭莫宏のこういう作品も読んでみたいという気持ちにさせられる。
道草晴子『みちくさ日記』
他人事としては読めないのだが、閉鎖病棟の窓の鉄格子とかのエピソードなどはそうだよなあと思う。妻の入院した病院の窓は手が一本出せる程度しか開けることができなかった。
カサハラテツロー『アトム ザ・ビギニング(1)(2)』
ゆうきまさみがコンセプトワークスとして参加しているので読んでみた。どこまで作品に関わっているのかはわからないけれども、今のところはカサハラテツローの世界。無理に手塚治虫の絵に似せようとしていないところも含めてどういうふうにアトムへとつながっていくのか楽しみでもある。
芦奈野ひとし『コトノバドライブ(1)(2)』
たまに読む分にはちょうどいい。物語などあって無きようなもので、何処を切り取っても芦奈野ひとし。空気感、特に冬の朝のキリッとした冷たくそしてすがすがしい空気を感じさせてくれる。
デイビッド・ピーターセン『マウスガード 1152年 (秋)(冬)』
アメコミ版『ガンバの冒険』と例えるのが手っ取り早いが、『ガンバの冒険』とはまったく雰囲気も味付けも異なる。より殺伐として刹那的で秋と冬という季節の物語のせいか、絶望的な部分もある。
大石まさる『ライプニッツ』
大石まさるのSFはやっぱりハインラインだなあと思わせられる。猫も出てくるし。
白井弓子『ラフナス』全2巻
『WOMBS』と同じく骨太の物語になるのかと思ったらあっさりと終わってしまった。作者のあとがきによると同じ世界での別の物語の構想もあるようなので、これはこれでいいかという気もするけれども、世界設定の面白さに比べて物語が少し弱かった印象を受けてしまう。
優『五時間目の戦争(1)(2)』
浅野いにお『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション(1)(2)』
高橋しん氏の『最終兵器彼女』とか、秋山瑞人の『イリヤの空、UFOの夏』のような、社会的規模ではなにかとんでもないことが起こっているという状況下での主人公たちの日常生活を描いた物語というのが実は好きだ。『五時間目の戦争』と『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』もその系統に連なる作品。
三部けい『僕だけがいない街(1)-(7)]』
5巻で真犯人が判明した後、どういう展開になるのかと思っていたら予想外の展開をしたのだが、リバイバルの能力はどうなっているのだろうか。
横山旬『変身!(1)(2)』
2巻に入ってようやく少し大きな話が見えてきたのだけれども、あまりそういった方向へとは進んでほしくないなあというくらいに、基本の物語が面白い。
白山宣之『幻の花』
2013年の『地上の記憶』に続き、白山宣之の作品がまた一冊になった。怪獣漫画なのに怪獣が一切描かれない「宇宙大怪獣ギララ」が秀逸。怪獣映画でありながら怪獣が登場しない『大怪獣東京に現わる』よりも前に描かれた作品。
岩岡ヒサエ『星が原あおまんじゅうの森』全5巻
実を言うと3巻で挫折してしまったのだけれども、5巻で完結したということで最後まで読んでみたところ、挫折しないでよかったと感じさせてくれるくらい綺麗に終わらせてくれた。ただ、ここまでくるともう一歩その先を見せて欲しかった、という欲が出てくるのは『土星マンション』と互換性のある印象だからだろう。
阿部共実『死にたくなるしょうもない日々が死にたくなるくらいしょうもなくて死ぬほど死にたくない日々(1)(2)』
こっちの方向へと向かっていったのかといった感じ。収録作の中では「8304」と「7759」がそのタイトルの特異な付け方も相まって別格。好きか嫌いかでいえば好きではないのだが、阿部共実からギャグと毒を取り除くとこれになるのかと思う。
麻生みこと『海月と私』全4巻
『星が原あおまんじゅうの森』とは反対に、もう少しこの世界を楽しみたいと思ったけれども、意外とあっさりと終わってしまった。
市川ラク『白い街の夜たち』全3巻
結局、作者のトルコ好きということに終始しただけの話になってしまったきらいもあるけれども、それもまた良し。
ゆうきまさみ『白暮のクロニクル(1)-(7)』
基本的に一巻完結のエピソードのつながりで、抜群の安定度。
たかみち『百万畳ラビリンス』全2巻
ある日突然、日常が非日常になる。どこまで行ってもループする世界の中でそこから脱出しようとする主人公たち。しかし主人公はかならずしもこの世界を忌み嫌っているわけではなく、脱出するというよりもこの世界の謎を解くというゲームを楽しむ。主人公の造形が素晴らしい。
松田洋子『私を連れて逃げて、お願い。(1)(2)』
とことん奈落の底へと転がり落ちて破滅へとむかっていく男女の物語。こうして書くとコーネル・ウールリッチの世界にも通じるものがあるのだが、ウールリッチが描く人物と松田洋子の人物の間には天と地の違いがある。徹底したダメ人間で、それ故に可笑しいのだが、その可笑しさは悲しさであり、切なさでもある。
西UKO『となりのロボット』
高浜寛『蝶のみちゆき』
一ノ関圭『鼻紙写楽』
この三冊は5巻以内で完結する傑作漫画99冊+α その一で紹介済みなので省く。
岡村星『誘爆発作(1)-(5)』
勢いだけで乗り切っているといえばそこまでなんだけれども、4巻までは面白い。5巻に入って勢いだけでカバーしきれなくなってきたきらいがあるのが残念だけれども、次巻で持ちなおすことができるか。巻末のあとがき漫画も面白い。
ヤマザキコレ『魔法使いの嫁(1)-(4)』
ケルト神話の世界を持ってきたファンタジー。上品さと落ち着きがあって雰囲気は抜群に良い。その分派手な展開はないけれども、同じ作者の『フラウ・ファウスト(1)(2)』も同様に面白い。
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